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時計台のまえを通り過ぎ、神宮へとむかう道を走っていると、助手席にいる西村の胸ポケットから着信音が聞こえてきた。
おもむろに取り出し、通知を確認すると、彼はすぐにメッセージを打ち返信をしている。
「はー、今日は定時で終われますかね」
「終われるでしょう。ちゃんと時間内に売り上げあげて、事務室に帰ろう」
なにか予定があるのかな。彼女だろうかと思いつつ、相棒だからって聞かない。
「このまえ約束を破ってしまったから、彼女のご機嫌取りが大変なんですよ。大通公園のビアガーデンで許してもらえるかな」
向こうからけろっとカノジョからと明かしたので、ハンドルを握っていた真広も驚く。
「カノジョ、からだったんだ」
「そうっす。三年目なんで、ちょいマンネリなんですよ。あっちも結婚がどーのこーのとか言い出してきたし。ま、それもそうだよな。そろそろかなって感じっす」
男だからなのか、かーるく言うなあと真広は密かに呆気にとられていた。
「小山さんは、結婚したいとかないんですか」
こっちが彼女がいるかどうかなんてプライベートの質問を控えたのに、そこもかーるく突っ込んできたなあとまたもや密かに苦笑いを浮かべてしまう。
「これがさ、ないんだなあ」
「へえ。もうすぐ三十ですよね。女性ってそこを境目に焦ったりするもんなんじゃないんですか。ほら、最近、お客様から見合いの話とか持ち込まれて、時々、困ってるじゃないですか。セレブなツテあるのに断っちゃって、女性なら願ったり叶ったりじゃないんですか」
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