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年齢までさらっと触れてきたうえに、女性に言えばセクハラ!と大騒ぎでもされかねない発言をぽんぽんと投げてくる。
「ただの外商員だから。上司に報告して勝手に受けない決まりでしょ。それに、お家柄が違いすぎるって。そうじゃなくても、結婚なんて本気でいまは考えていないよ」
さて。ここで一度、先輩として引き締めておこうかな。
「あのさ。私だからいいけど、これから先輩になって上司になる可能性が西村君にはあるから、女性のプライベートや立場についてはデリケートな問題だから触れない方がいいよ」
「あ! ……申し訳ありません……、つい……」
「だから。私だからいいんだって。ただ女性としてここ聞き逃しちゃったらさ、あのとき先輩が女性なのに教えてくれなかったからだとかなりたくないし。若くて取り返しがつくいまのうちに言っておく。いままでこれはおじさんのちょっとしたジョークとコミュニケーションと捉えてきた課長がセクハラ告発されて地方倉庫に飛ばされたばかりじゃない。西村君にはそうなってほしくない」
「ありがとうございます。気をつけます」
こういうところは、きちんとしているんだよなあ。と、助手席にいるスーツを着こなしている相棒が最高に凜々しいお仕事青年に変貌したのを眺める。
「あ、でも自分。小山さんだから言っちゃうんです。なんか姉御って感じでめっちゃ親しみやすくて、最初の担当先輩が小山さんでめっちゃラッキーです!」
ああ、憎めないんだよなあ。この子の良いところだろなあと羨ましくも思っている。
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