5.元カレが、凱旋??

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 この愛嬌でセレブな奥様たちもご主人たちにも好かれるのは、百貨店販売員としては恵まれた天性を持っているからだと真広は思っている。 「失礼ついでに。俺の同級生とか同期とか紹介しちゃったりしますよ」 「いや、いいや。そういうことが、どうにも最近めんどくさいんだよね」 「あー、わかる気がするー。俺もあと二年、三十ぐらいになるとそう思うのかなあ」 「西村君はこれから上が重宝すると思うから、仕事に打ち込むなら、あとのことがめんどうになるよ」 「なるほど。仕事に打ち込むためにも結婚はありかもしれませんね。嫁さんが家のことやってくれる」  なにげに女性に対して危ないこと言ってるなとか思ったが、もう彼の価値観だからやめておこうと、口うるさい先輩にならないよう真広は黙った。 「セフレとかどうっすか。俺の友人にいるんですよ。いろいろめんどくさいから、セックスだけさせてくれる女いねえかなーって。すみません。これも失礼っすよね」 「わかっていれば、よろしい」 「でも、ほんとセフレは冗談で、マジな紹介しますよ。お世話になってますから。さっきのセフレ願望だけの危険なヤツは絶対除外しますし。めんどいなら、出会い系アプリとかなんて論外でしょう、小山さん」  そうなんです。そのとおり。  さらに怒れなかったのはまさにその『セックスだけさせてくれる男いないかなー』は真広の中に密かにあるからだった。  セフレ願望だけの危険なヤツ……か。私、いま危険な女なのか。  女だって。セックスだけが欲しいときあるよ。  むしろ、その友人の気持ち、よーくわかるわ――と心で呟きながら、真広はアクセルを踏む。
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