7829人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
でも西村は失礼だけど、弁えているし、信頼できるヤツだった。セフレの男は除外するときちんと言ってくれ、信頼できるヤツを紹介するとまで、わざわざ言ってくれるのだから、信用できる紹介なのだろう。
でも。その信用できる真面目な紹介もいまの真広には不要で、最上級にめんどくさい――だった。
真剣なつきあいを始めちゃったら、あれこれ相手に気を遣う日々がやってくるのだ。
ああ、自分こそが面倒な女になっているんだなあと、最近は思っている。
「俺の同期といえば。食品にいるヤツがいるんですけど、そこに新しい係長が来るらしいですよ。以前、ここにいた時、若いのにヒットをいくつも出したバイヤーさんらしいです」
運転している真広の背筋がぴんと伸びた。
それって東京本社に栄転した……元カレでは……??
「そいつが去年、東京本社の研修に出向いたときに、その人が講師だったとかで、写真を送ってきたんですよ」
スマートフォンの画面をふいふいとフリックして、わざわざその新係長の写真を見せてくれる。
「朝比奈さんっていうらしいです。年齢的に、小山さんと同期なんじゃ? という話題にもなったので確認ついで」
凄腕の食品バイヤーで朝比奈って、完全に元カレじゃんと真広はおののいた! 運転をしながらチラ見をしただけなのに、真広は驚愕する。
「食品バイヤーってかんじの人ですよね。結婚してから太っちゃったとか言ってたらしいです」
元カレの面影がすこーしだけ残ったふくよかな男に変貌していたのだ。
元カレが凱旋? するらしい……?
女の情報網はどこにいっても凄まじいが、百貨店の男の情報網も舐めてはいけない。
女性ばかりの職場で、裏方を支えている男たちだからこそ、結束が固いのだ。
侮れず西村。でも、よくできた後輩でもある。
最初のコメントを投稿しよう!