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32.愛の行方も気にしなくていい
その日の夕。真広は大通公園へと向かう。
すっかり夏はどこかへ行ってしまい、黄金色に染まった銀杏の葉が舞う。街路樹には、ナナカマドの赤い実も目立ち始め、北国はもう冬支度の気配だった。
すっかり日が短くなり、北国の早い夜が始まっている。
夜空にテレビ塔が綺麗に浮かびあがる。
今日はこのテレビ塔がある1丁目広場で駿と待ち合わせ。
ライトアップで浮かび上がる鉄塔を見上げている彼をみつける。
「駿君、お待たせ」
「お疲れさま、真広」
また西村と一緒に選んだとかいう、山岳ウェアメーカーの薄い黒のコートを羽織って待っていた。
「ここで待ち合わせるの久しぶりだね」
「うん。俺も懐かしく待っていたよ。さて、行こうか」
遅い時間だったが、ウェディングプランナーのところへ、結婚式の相談に出向くところだった。
一緒に並んだだけで、駿が真広の腰を抱き寄せてくる。
そして。こんな街中の公園なのに。そっと真広にキスをしてきた。一瞬だけ……。
「もう、ここ中心街の公園だよ」
「でも。もう暗いし、誰も気にしない。おかえりってしたかったんだよ」
すっかり甘々のフィアンセになっていた。
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