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前回は夕食をお礼としてご馳走した真広だったが、今日、誘ったら彼もまた一緒に食べてくれるのだろうかと迷っている。
「あの、」
でも、声をかけてくれたのは彼から。
「今日は割り勘でどうでしょう。どうせ帰宅しても俺ひとりですし、今日は寮の食事はキャンセルしてきたので」
「私も帰宅してもひとりです。でも、毎回外食をお誘いするのはどうかなと思って……」
「真広さんは独り暮らしでしたよね。毎回外食はやっぱり負担ですよね」
「いえ、結構しますよ。独身だからこそ。あ、今日はスープカレーとかどうですか。時計台のちかくにあるんですよ。ちっちゃな目立たないお店が」
「いいですね。ここまで出てこないと、そういう店にはなかなか行けないので、この機会にお願いします。漫画の感想も聞きたいので」
彼とゆっくりと話す口実ができて、真広もほっとする。
なんでだろう……。この人と話したいと思う自分がいることに、初めて気がついた。
大通公園からすぐそこの札幌時計台付近にある小さな店にはいった。
路地から見える細くて狭い階段を上がって、二階にあるスープカレー専門店だった。
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