6.恋はめんどくさい

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 やっぱりこのまえご馳走した時は遠慮していたんだなあとわかるほどに、彼が大盛りでがっつり食べている。 「んー、美味いです! 連れてきてくれて、ありがとうございます」 「そう、よかった。職場から近いから時々、食べて帰ったり、相棒とランチで来たりしているの」 「俺は署で賄いか、寮で食事か、コンビニばっかなんですよ。この前のビアガーデンも飲み会で来たりはしますけど、シフトで参加できない時もあったり、独りで洒落た店とかもわざわざ出向こうとは思わなくって。ほんとうは、行ってみたいなとは思っているうちに……です」  だから街中で勤めている真広に会いに来るのをきっかけに食べられて嬉しい――と素直な明るい雰囲気を今日も見せてくれる。  接客業も笑顔が第一だし、心からお客様のためを思っての笑顔のはずなんだけれど。やっぱり違うんだなあと彼を見ていて思う。  素直な青年の笑顔が清々しくて、真広もほっとする。まあ……、弟と一緒に食事に来た、みたいなもんだなと思ってはいるのだが。 「どうでした。あの50巻もあるのは。ちょっと女性にはハードボイルドすぎたかなと思ったんですけど」
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