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「んー、スープカレー専門店の、最高です」
「よかった。ここらへん激戦区だからね。おいしいお店多いよ」
「あの……、よろしければ、」
彼がなにかを言いかけた時、ふたりが向き合って食事をしている席のそばを、若いカップルが通り過ぎようとしていた。
その男性と目が合い、真広はすすっていたスープカレーをごくんと慌てて飲み込んでしまう。
「え、小山さん」
「西村君!」
一緒に仕事をしていた時のスーツ姿のままの後輩のそばには、ほんわりした可憐な女性が一緒に並んでいた。
仲直りで会う約束をしていた西村の恋人だとすぐにわかった。
ビアガーデンで許してくれるかなと言っていたが許してくれなかったようで、いつもランチで一緒に来るこの店を彼も選んだということらしい。
真広も後輩の連れに驚いているが、西村は真広の連れを見てもっと驚いていた。さらに、西村が連れいている彼女の表情が強ばったのが真広にもわかった。
彼女の視線が真広へと突き刺さる。
「コウ君、行こう」
「え、ああ……」
西村も歯切れが悪い。
ふたり揃って、奥のふたりがけのテーブルへと行ってしまった。
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