6.恋はめんどくさい

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「お仕事で一緒の方ですか」 「うん。いま教育している後輩で、訪問するときの相棒。紳士服にいたときから売り上げ記録が凄くてね。その才覚かわれて外商部にきたの。今日も紳士服を持って行ったら、全売れ。頼もしい後輩だよ」 「俺と一緒にいたところで、大丈夫ですか」 「カレシなんていないことはよーくわかっているから、そうではない相手だとわかると思うよ。弟の友だちだと次の朝に言えばいいだけだから」  そこでなぜか駿(しゅん)も黙りこくった。 「お姉さん、いま特定のお相手いないんですか」 「いない、いない。めんどくさいの」 「めんどくさい?」  彼がきょとんとした。 「私がだめなんだ。いまの生活のリズムを崩すようなことが怖くてね。相手を気遣ってやる余裕がないの。勢いで付き合ってみたところで、相手を傷つけちゃうのはきっと私のほう。いわゆる、我が儘なんだよね。自分に対しても相手に対しても」 「そんなふうに見えませんけど」 「たぶん……。優先順序で仕事が上に来ちゃってるんだね。そりゃ……、恋の甘さも魅力的だけど。そういうのはいまはいいかな……」
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