7831人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「お仕事で一緒の方ですか」
「うん。いま教育している後輩で、訪問するときの相棒。紳士服にいたときから売り上げ記録が凄くてね。その才覚かわれて外商部にきたの。今日も紳士服を持って行ったら、全売れ。頼もしい後輩だよ」
「俺と一緒にいたところで、大丈夫ですか」
「カレシなんていないことはよーくわかっているから、そうではない相手だとわかると思うよ。弟の友だちだと次の朝に言えばいいだけだから」
そこでなぜか駿も黙りこくった。
「お姉さん、いま特定のお相手いないんですか」
「いない、いない。めんどくさいの」
「めんどくさい?」
彼がきょとんとした。
「私がだめなんだ。いまの生活のリズムを崩すようなことが怖くてね。相手を気遣ってやる余裕がないの。勢いで付き合ってみたところで、相手を傷つけちゃうのはきっと私のほう。いわゆる、我が儘なんだよね。自分に対しても相手に対しても」
「そんなふうに見えませんけど」
「たぶん……。優先順序で仕事が上に来ちゃってるんだね。そりゃ……、恋の甘さも魅力的だけど。そういうのはいまはいいかな……」
最初のコメントを投稿しよう!