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おなじだ。きっと学生から卒業して数年の下積みをしてきて、やっと本職になろうとしている時期で、キャリア的に気が抜けない年頃にもなっているんだと真広も感じた。
「そっか。消防官だとなおさらだよね。人の命に関わる仕事だし、チームワークも乱せない。自分の身も守らないといけないもんね」
「俺が精神的にも器用だとよかったんですけれど」
何事にも誠実だからこそ、何に対しても中途半端にできずに、不誠実になるならそれは諦めるという性格が透けて見えた。
真広なんか、これほどの真摯さなどない。ほんとうに自分本位なだけ。やっぱり眩しい男だなあと、自然に微笑ましく見つめていた。
「あ、俺。なんか変なこと口走っていましたね」
「ううん。すんごくよくわかるよ。槙野君は相手を傷つけたくなくてそうしている。または人命に対して真摯に向き合うことを選んでいるってことだもの。私は自分の我が儘だけで切り捨ててるだけ……」
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