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真広はすぐ側にいる駿の顔をちらっと見上げる。目が合った彼も、真広が巻き込まれそうになっていて戸惑っている。
そんな彼に。真広は狭い階段のこの場で、ガバッと抱きついた。
さすがに駿もびっくりした顔で硬直して、西村と彼女は面食らっていた。
「ごめんね。私たち、いまデートなの。西村君には黙っていたけど、最近こうなったから、まだ言えなかったんだ。ね、駿君」
わかっていたけど、胸板厚い、弾力ある! その胸に真広は彼女に信じてもらえるようにと、わざとぐいぐい抱きついた。
「消防官なの。彼も年下だから。いまさら西村君には興味ないかな。そもそもデパートの男はたくさん見てきたから興味ない。こういう鍛えている男がタイプなの! だから安心して! 西村にはまったく興味ない」
その場がシンとした。
あれ。もしかして、あからさまな嘘に見えちゃったかな。どうしよう、バカなおばさんに見えたかも!?
急に恥ずかしさと情けなさが込み上げてきて、頬も耳まで熱くなってきた。
でも次の瞬間、逞しい腕が真広の腰にまわって、ぎゅっと抱き寄せられていた。
「彼女のいうとおり。真広さんのようにきちっとした年上の女性に出会えて、俺もいま夢中なんですよ。男ばっかの世界にいるんで。男性の相棒がいるなんて知らなかったから、さっき、若干のジェラシーが湧いてしまったので、彼女さんの気持ちもわかるけど」
えー! 合わせてくれた!
恐る恐る、彼の顔を見上げると、今度合ったその目はにこっと爽やかに緩んでいた。
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