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「いや、食べているときから、あちらの険悪な様子はわかっていたし、まさかの仕事の相棒である真広さんに疑いがかかっていたら、そりゃ、あれぐらいのことしてやらなくちゃ収まらないと俺も思ったんで」
もうどっと汗をかき始めていた。
思い切りよすぎた割には、いまになって羞恥心も汗と一緒に溢れ出てくるよう。
「で、でも、なんとかなりそうで安心した。実は今日、仕事中に彼女と仲直りをしなくちゃいけないと聞かされていたものだから」
「あ、そうだったんですね」
そう言いながら、地下へと向かう入り口へと歩く。
「槙野君も地下鉄だよね」
「真広さんとは違う路線ですけれど」
なんて話しながら、地下街への階段を降りていく。
今日はもうさっさと帰ろう。と思っている自分にも我に返る。
私、なにを焦っているんだ。そう思ったときに、はたと気がついた。
彼の胸だ。分厚い胸。それに抱きついたときの肌のにおい。男の匂いを嗅いでしまったからだ。
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