7834人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
9.ヒリヒリさせて
適当なシティホテルに入った。
彼も無言で真広も無言。互いの間の空気がとてつもなく張り詰めている。
部屋の中に入って灯りがついたが、彼が消してしまった。
こう決めてから、真広は駿の背中しか見ていない。彼が顔を見せてくれなくなったのもあるし、目が合わせられないというのもある。
「もう一度、確認しておくんですけど……」
「確認しなくてもいいよ」
真広から先に夜の街灯りが見える部屋へと進んだ。
こっちは覚悟の上、……いや、いきなり転がってきた話にどうしてよいかわからない……と思いつつも、ほんとに、ほんとに、あんなに焦がれていた『こと』ができちゃうんだ? しかも、なんだか身体鍛えている年下の若い男性と……!?
いい年してドギマギしている。
なのに期待値も上がっている。
なのに久しぶりすぎて、やっぱりだめかもと動揺もしている!
なんて、ひとりでわたわたしていることすら、年上のお姉さんとしてバレないように必死に抑え込んで平静を保とうとしている。
まずは……シャワーかな……と、ひとまず後ろで気配だけ感じる彼へと振り返ろうとした。
「真広さん――」
え!?
最初のコメントを投稿しよう!