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帰路はもぬけの殻のようになっていて、反対路線で帰ろうとしているのに、ふらふらしている真広に、駿が『送りましょうか』といったほどだった。
なのに彼はけろっとしていて。ぼうっとしている真広をあれこれお世話してくれたほう。ある意味、レスキュー精神にスイッチが入っていた気もする。
ふわふわと浮かぶのは、あの鍛えられている身体ばっかり。
女の裸を妄想する男性とかわらんなこりゃ――とか言いたくなる妄想ぶりを発揮している。
特に。あの後ろ姿。水を持ってきてくれた時の……。優しい眼差し。
「――さん、小山さん」
西村の声がしてハッと妄想セクシーランドから現世に引き戻される。
「なに?」
「お客様、ですよ」
そう言われて、西村が向けている目線の先へと振り返る。
「よ、久しぶり。帰ってきた」
食品課の係長になって異動してきたという彼がそこにいた。
元カレの朝比奈吾郎が、懐かしい笑顔で真広を訪ねてきた。
でも真広は目を瞠り、一瞬だけ西村に振り返る。彼も『俺、知りません』と頭を振った。
何故なら、西村に見せられた写真は太っていたのに、目の前に現れた彼はすっきりと元通り、真広がよく知っている体型のままだったからだ。
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