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でも、久しぶりの彼を見ていて真広は思う。同い年なのに、ちょっと老けたなと。いや、やつれたというのだろうか。
重役のお嬢様に気に入られただけあって、デパートにはよくいるスッとしたいい男だったのに。同い年なら、これから男盛り、大人の男の色気も備わってきていたはず。でも、目の前の彼はどこか精悍さが欠けているように感じてしまった。
「でさ。ちょっといいか。同期生としてちょっと」
吾郎が外商部事務室の外通路へ一緒に出て欲しいとばかりに、つきたてた親指をくいくいとそちらに動かす。
西村に『ちょっと行ってくる』と伝え、PCを離席状態にして真広も席を立った。
通路に出ると、人気がない奥まで連れて行かれる。大通の街並みがよく見える小窓がある突き当たりまで連れて行かれた。
「えっとさ。まあ、そういうことなんだよ」
「知らなかった。大変だったんだね。って……もしかして……、離婚しちゃって、こっちに追いやられたの?」
浮気? 不倫? でも、そんなやつじゃないことはよくわかっている。
「なんつーの。奥さんがやっちゃったほうでさ」
「えー! そうなの。なんで。やっぱお嬢様だったの」
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