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女性だから、甘い恋愛ものに触れて心を慰めたらいいだろう――と、最初は思っていた。
自分でも欲していた。いまでも本当はそう!
でも、その甘いうっとりする恋愛ものに触れてしまうと、現実に引き戻されたときの空しさへとシフトするギャップが激しい。
もう三年、彼がいない。食品バイヤーだった同期の彼は目利きも優秀で、ヒット商品をいくつも出したので、東京本社へと栄転してしまったのだ。
遠距離恋愛をしばらく続けたが、どちらも多忙で、気力が続かず別れた。
そのうちに風の噂で、東京本社重役のお嬢様と結婚したと聞いた。
それから男運なし。百貨店は女性ばかりの大奥のような業界と言いたいところだが、売り場以外の裏方仕事は男性が多い。外商部なんて男性だらけだ。出会いがありそうと思うが、とんでもない。
みなキャリアがある既婚者や、支店へ派遣される転勤族ばかり。恋なんてうかれたチャンスを得る瞬間も少ない。
真広を外商員としてたたき込んでくれた上司は、既婚女性の主任だったので、なおさらに異性と出会うチャンスはなかった。
不倫なんてこのご時世、リスクが高いし、そんなもの最大級にド面倒くさい。そんなセックスはいらないのである。
恋が遠のき、男が遠のき、渇いていく女の潤い……。
だから! 余暇だけでも、現実逃避世界で甘く浸ろうと思ったら、余計な切なさと悲しさが襲ってくる。翌日の仕事に響く。
そして辿り着いたのが、青年漫画! むちゃくちゃ強い男が逆境に立ち向かっていく爽快感で、疲れを癒やす!!!
もろタイプの男性をひたすら目で追って脳内に保管して潤す!!
それが真広のいまのストレス解消……。
なんて寂しいアラサー女子と言われても、かまわない。
優先的に、仕事が上位を占めているのだ。ここまで積み重ねてきたキャリアを手放したくない。
結婚? もう時代的にぜったいにしなくちゃいけない風潮も薄まってきたし、したい人がすればいいだけ。
子供? ほしくないと言ったら嘘になるけれど、いまは結婚して家庭を持って子育てをしてみたいなんて、仕事より苦行に思えて自らその世界に足を踏み入れようだなんてまったく思っていない。
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