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12.もしや……よりを戻したい!?
翌日の終業後、夜。真広は同期生で元カレの吾郎との待ち合わせ場所へ向かう。
戦友でも男と女だったら、いつの間にか、そういう関係になる。
若い下積みの頃は不平不満も満載で、それを聞く相手、言える相手、精神的な支えがそばにあることは、日々の中でも大きな存在だった。そこに若い男女の欲情が一致すればそれはもう。
まあ、でも。よくある出会いであっただけかも――と、いまの真広の心はそう落ち着いている。
吾郎との関係で残ったのは、初めての恋人という記憶と、辛いときを一緒に乗り越えてきた戦友という友情だ。
そう、これは友情である。
拳を握って、自分に言い聞かせ、真広はいきつけだった居酒屋的焼き鳥店へ向かう。
二十代前半のほろ苦い思いもここには残っている。でも、いまとなってはそれも懐かしい日々でもあった。
店舗はそろそろ閉店時間。それでもお客様が全員退店されるまで、販売員は店頭に並んで立ってお見送りをしなければならない。
当番制で各ショップから数名、エスカレーターの昇降口と、駐車場出入り口にも配置され、お客様をお見送りする。
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