12.もしや……よりを戻したい!?

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 正面玄関が閉まったら、今度は店舗の片付け。レジ締め、出納窓口までへの売上金提出。店舗の売り上げ報告、ミーティングなどを経て、だいたい一時間で販売員が退勤できるようになる。早いショップは半時で終わって出てこれるが、役職を得た吾郎は二十時は過ぎるだろうと、真広は予測していた。  その間、今日も百貨店舗内を見て回り、販売員からおすすめを聞き出してみたり、目星を付けたり。カフェで仕事のスケジュールをまとめておこうと時間を潰していた。  二十時すぎ、吾郎が姿を見せた。  先にビールを飲んでいる真広を見つけた彼が、笑顔になって歩み寄ってきた。 「ごめん、先に一杯、やっちゃっていたよ」 「わるい、わるい。ぜんぜんOK。待たせたな」 「やっぱ、販売にいるとこの時間になっちゃうよね」 「懐かしいだろ。俺ら、販売から入っていったんだから」  真広も研修を終えて配置されたのは、一階の婦人雑貨からだった。  靴や帽子に財布、ハンカチ、傘などを販売している部署である。そこから五階のリビング雑貨へと異動して、吾郎と遠距離恋愛で必死な時に、外商部から来ないかという打診を受けた。  ここで思い出すのが、西村の彼女のことである。
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