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後輩の彼女と、当時の真広はおそらくおない年ぐらいだろう。ここで男が煮え切らなかったのだ。
彼を追って東京に行きたい、でも彼はそのつもりはなさそう。この関係、この状態で続くの? 私、外商部に行っちゃうよ。
異動する前に、女として身を固めることを優先しようとしていたのだ。でも、彼はそうではなかった。いや、違う。『まだそんな時期じゃないよ。俺も転勤異動したばかりで必死なんだよ』。同い年の同期生もおなじくいっぱいいっぱいだったのだ。
彼との慰めがなければ辛い。でも、会えるのは酷ければ二ヶ月に一度になる。会ってしまうとまた二ヶ月先と思うのが余計辛い。もう解放されたい。
真広も思い詰めていたが、そんな女を相手にする同い年の彼も疲れていたのだろう。きっと別れて、お互いにほっとしていた。心と体に虚無感が襲っても、ほっとしていた。
ゆったりした休日を寂しく思っていたのは遠い日。感情をかき乱される休日がなくなって、自分のためだけに過ごせる休日の心地よさを知ったのは、この頃だろうか。
「うーん、札幌に帰ってきたらやっぱりビールからだよな」
「相変わらず、舌が肥えていそうだね」
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