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「ああ。よくしてくれたよ。なにもかも。離婚のことも、ひどく心を痛めてくれて、娘がやっちゃいけないことをやって申し訳ないって頭を下げまくってくれてさ。もう、俺、それだけでいいんだけどな……」
やつれた顔で、さらに疲れたように大きなため息をつかれたので、元カノとしても同期としても胸が痛んだ。
そこでビールがやってきて、ひとまず『おかえりなさい』、『ただいま』のグラスを掲げるだけの乾杯をした。
「うっめ。地元の味だ」
地元ビール会社のお気に入りブランドをひとくち飲んで、やっとよく知っている吾郎の笑顔が見られた。
「適当に頼んでおいたよ。吾郎が好きだったアスパラベーコンとか砂肝とか」
「そういうところ、真広と再会したーーって実感できるな。サンキュ」
さっそく美味しそうにアスパラベーコン巻きを吾郎が頬張る。
「アスパラも地元の味だな」
元は北海道出身の彼だから、懐かしい味ばかりのようだった。
「離婚して、異動願いだしたってことは、吾郎君から札幌店に帰りたいってお願いしたってことだよね?」
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