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3.漫画ソムリエ、現る
百貨店のビル内にある外商部事務室でデスクワークをしていると、スマートフォンにメッセージが着信していることに気がつく。
弟からだった。
【 なんかみつかった? 読みたいジャンルがあったら、俺がいま追いかけている作品名とか教えるよ 】
ジャンルなんかないよ。とにかくあればよかったんだからと、再度ため息をつく。
【 自分で選ぶ時間がストレス 】
【 姉ちゃんらしくて笑う 】
【 さようでございますね。めんどくさがりな姉です 】
【 あんな夢中になるとは俺も思わなかった。一緒住んでいる時は俺の本棚なんて見向きもしなかったじゃん 】
【 子供の時は女性向けが好きだったし、どっちかというと映画派だったじゃん 】
なんて事務処理をしていた手元を気にしながら、返信をする。
弟もいま手が空いているのかどんどん返してくる。そのうちに、弟がひとつの提案を示した。
【 俺の友達に、漫画いっぱいもっているやつがいるんだけどさ。そいつから借りられるか聞いてみる 】
【 え! いいの!? 借りるって……迷惑なんじゃ 】
【 高校の同級生で、その頃から借りたり貸したりしていたから大丈夫。そいつもいま仕事でめっちゃ忙しくて会う機会は減ったけど、漫画大好きでいまでもたくさん買い込んでいるみただから。あいつも漫画がストレス解消のやつだからかさ。聞いてみるから、ちょっと待っててな 】
【 ありがとう!!!! その同級生さんにお礼するから! 】
【 ジャンルなんでもいいんだよな 】
【 なんでもいい!!! 】
うわー! 弟以外の人が選んだ漫画ってなんだろう、なんだろう!
ものすごくわくわくしてきた。
報告書としてPC作成をしている間の半時ぐらいだったか、再度、スマートフォンにメッセージが届いた。
【 友達に連絡した。貸してくれるってよ。ほんとうに勝手にチョイスしますって言ってた。実家に持ってきてくれるから、届いたら連絡するな 】
【 楽しみ! そのお友達にお礼を言っておいてね。お返し、食事がいいなら、いいところ男友達同士で行けるように手配しておくよ 】
【 !? 俺もいいの。めっちゃたのしみ~。そいつと相談しておく!! 姉ちゃんのおかげで、そいつと久しぶりに会えそうだったし、いい機会くれてサンクス 】
弟の役にも立てたらしい。
しかも、開けてみるまでお楽しみの青年漫画がまだまだ手元にどんどんやってくるんだと思うだけで、もう~、仕事頑張れちゃう――と、真広は上機嫌で売り上げ報告書に向かった。
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