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8月25日
今日も、うだるように暑い。
火照った顔を窓から出して、少しでも風を取り込もうとする。
勇気くんとあかりんが十五時のおやつにアイスの買い出しに行っちゃった。
二人はいつの間にか付き合っていたみたいで、私に見られてるとも気づかずに手をつなぎながら、仲良く校門を出て行くのが見えた。
私とタスクは何となく距離を保ちながら、二人の帰りを各々待つ。
タスクは新聞を読み直していて、私はすることもなく外を見下ろす中で。
「あっ!」
思わず自分の口から出ちゃった声を抑えようとしても、もう聞こえちゃってた。
「何? どした?」
気付いて近寄って来たタスクに見えないように慌ててカーテンをシャッとひいて、何でもないと首を振る。
「何隠してんだよ、見せろって」
笑いながら他の窓から外を覗き込んだタスクが目を丸くした。
「あー、手繋いでんな、アレ」
アレ、というのは、朝ちゃんと翼のことだ。
「残念だったね、タスク」
朝ちゃんと翼が付き合っちゃったみたい。
二人は、美男美女でお似合いだけど、タスクにとってはショックだよ、ね。
「ん~……」
私の側に来たタスクが、グッシャグシャになるくらいに両手で私の頭を撫でた後、ポンポンとやさしく叩く。
何で? 驚いて見上げたら、残念そうな顔をして目を細めた。
「翼、見る目ねえな」
……、へ?
「とっとと、野々も告白しとけば良かったのによ。したら朝ちゃんじゃなくって、オマエだったんじゃねえの? 今頃、翼の隣にいたやつ」
よしよしと今度は、優しく撫でてくれて。
「バカだな翼、もったいねえな」
苦笑して目を細めた。
待って、なに、もったいないって?
「し、したけど、朝ちゃんめんこいし、お似合いでしょうや、二人!……、まあ、その……タスクはショックだったかもしんないけどさ」
きっと私が失恋したのを必死に慰めてくれてるんだろうけれど、そんなの夏の初めにとっくにしているし、むしろ今失恋してるのはタスクじゃないか。
「で、でもホラ、タスクなら、もっとめんこい人もきっと」
言いかけて見上げたタスクの顔は何だか寂しそうに笑っていた。
「オレならオマエにしたんだけどな、朝ちゃんでなくって……」
「え?」
見つめ合ったまま十数秒、お互いに固まってしまう。
その沈黙を破ったのは、やはりタスクの方。
「アイツら遅えな、ちょっと見てくるわ」
濁すように、踵を返したタスクのシャツを掴んで、無理やりに引き留める。
待って、待ってよ、ねえ!!
タスクなら私にって、それって、ねえ!!
「あのさ、私の好きな人って翼じゃないからね!」
振り返ったタスクは私とおなじ真っ赤な顔でぶっきらぼうにつぶやいた。
「オレだって朝ちゃんじゃねえからな?」
――ナツイロ――
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