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朝ちゃんが帰っていったそのすぐ後、やはりバスケ部で私たちと同じクラスの翼が帰っていくのが見えた。
「翼ってかっこいいよね、明るいし、イイヤツだし」
イイヤツなのも明るいのもかっこいいのも本当だけど、私は特に翼のことを意識してなどいない。
ただその時の私は失恋でヤケクソ気味だったから、目の前のこの鈍感男よりもイケてると評判の翼を褒めてみたんだ。
「翼、ポニーテールが好きなんだってよ。伸ばせばいいんでね?」
ああ、絶望。
私の気持ちに、おかまいなしでニヤッと笑う顔に心が抉られる。
はいはい、わかってますよーだ!
脈など数グラムも数ミリもないってことだよね、脈の数え方知らないけど。
タスクの放った、協力体制は、私の純粋な心に傷跡を残しましたよ。
もう、知らない、もう、いいや!
「だね、伸ばすかな」
ハハハと諦めたように力無く笑う。
切りたかったのにな。
そろそろ肩にかかる髪の毛が暑苦しくて鬱陶しかったし。
「野々花~、タスク~!! サボってないでちゃんとやれよ、あかりんが困ってんぞ」
夏休み、四人しかいない一年A組に、勇気くんの声が響き、ハッと我に返った。
高校最初の学校祭が九月に控えていて、私たち四人が学級新聞コンクールの担当にされてしまったのだ。
四人人ともに部活入ってないから、夏休みでも動きやすいってのもある。
それと、頭のいい勇気くん、字がキレイなあかりん、美術部で絵が描ける私、誰とでも仲のいいタスクはネタ集めに最適との理由で皆に推薦されて集まっちゃった感じだ。
「野々花、ちゃんとイラスト描いてきた?」
あかりんの催促に昨日スケッチブックに描いた指定されたテーマのラフ画を見せると三人はそれを覗き込んで。
「やっぱうめえな、美術部」
タスクにそんな風に褒められたら照れる。
「いやあ、それほどでも~」
と照れ隠しにアニメキャラの物真似したけどスルーされたのは悲しい。
「勇気くんは記事書いてきた?」
「書いてきたよ、一つだけ。タスク、早く他にもネタ持ってこいよ」
「わかったー!」
何となくいいチームワーク。
夏休みという貴重な時間を学校で過ごさなきゃならないことよりも、
普段と同じようにタスクに会えるのが嬉しくて引き受けたというのにな。
始まってすぐすぐ失恋した模様……。
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