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文具屋で色ペンも買って後は飲み物を買ってから学校に戻る、その途中。
「泳ぎてえ……」
突然ブレーキをかけて止まったタスクがじーっと海を見てそう呟く。
海水浴場となっているその場所には、たくさんの人が泳いでいて気持ち良さそうだなって、私も思っていた。
「泳ぎたいねえ」
「よし、行くぞ! 野々」
「は⁉ タスク?!」
自転車から降りたタスクはスタスタと迷い無く、海に向かって歩いて行き、靴を脱ぎ捨てるとザブザブと海の中へ入っていく。
ジャージのハーフパンツギリギリまで海に浸かったタスクが私に手招きをする。
「野々、早く来い~! なまら気持ちいいから」
黙って突っ立ってるとジリジリと頭の天辺から真夏の日差しが降り注いでいて、痛い、陽ざしが痛い。
タスク、気持ち良さそうだなあ。
そう思ったら、荷物をそこに置いて私も靴を脱ぎ捨てて走っていた。
ジャバジャバと波をかき混ぜて、海中の砂を舞い上がらせながらタスクの側へ。
「なまら、気持ちいいねえ」
「だべっ!」
笑顔のタスクにうなずきながら、思いきりその白い波しぶきを蹴り上げてみたら、次の瞬間、タスクは頭からずぶ濡れになり、呆然と私を見下ろしていた。
「う、ごめん~!」
髪の毛からポタポタと水が滴るタスクの姿を見て、悪気があったわけじゃないと苦笑したら。
うんうん、そうか、とうなずいたタスクはニヤリと笑った。
「いい度胸してんなっ!」
ザブンっと目の前の波が大きく浮き上がったと思った瞬間、顔面に大量の飛沫が飛んできた。
「冷たっ!!」
仕返しされた、しかも倍返しで。
「私そこまでやってないっしょや!!」
「いや、野々の方が多かったって、ちょ、ヤメロって」
「ヤメロって言いながら倍返しすんな――!」
お互いにムキになっちゃってその後ずっと、ザブザブかけあいっこ。
気付けば、お互いビシャビシャになっていて、タスクがクルンと背中を向けた。
「帰るぞ、多分勇気もあかりんも遅いって怒ってる」
タスクが振り向かないまま、急にTシャツ脱いでそれをギュッと強く絞ってから後ろ手に私に差し伸べてくる。
「ん? なした?」
「着とけって、乾くまで、……透けてっから」
言われてパッと自分のTシャツを見たら……。
「見ないでよ、最低」
「一瞬しか見てねえってば! したから他のヤツに見られないようにオレのシャツ上に着てろや」
私の方を振り返らずに自転車に向かって歩いていく上半身裸のタスクの後を。
さっきまでタスクが着てたシャツを上に着て慌てて後を追う。
帰りの自転車はそんなタスクにつかまることなんかできないから。
「歩くわ、歩いてるうちに乾きそうだし」
タスクの裸なんて凝視できないから、自転車を押しながら歩くその後ろをついて歩く。
「アッチイ、ぜってえ日に灼ける……」
「自転車乗って、先帰っててもいいよ」
「いいや、ズボン乾かしながらゆっくり帰るし」
なんだかんだで、私の歩調に合わせてくれるから、また嬉しくなっちゃうじゃない……。
諦めきれなくなっちゃったらどうしてくれんの……?
自分がタスクのTシャツを着ていることに、またドキドキが止まらなくなっちゃってる。
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