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「マジックと消しゴム貰ってくっから」
そう言ってあかりんと勇気くんが職員室に行ってしまうと、タスクと二人きりになっちゃった。
さっきから何も言わないタスクに、どうしていいかわからず、私も黙々と新聞にイラストの下書きを入れる。
似合ってねえよ、ユカユカの真似してんじゃねえよとか思ってる?
ふと視線を感じて手を止めてタスクを見たら、やっぱり私をじっと見ていて、それから怒ったようにボソリとつぶやいた。
「なして髪切ったのよ」
「暑かったから!」
もし聞かれたらそう答えるつもりでいたので食い気味に即答した。
「翼、ポニーテールが好きって言ってたのに、もったいねえべや」
え? 翼!?
ああ、そうだ、そうだった。
私は翼が好きな体だった。
タスクが、まだそのことを覚えていたことにガッカリする。
「後もうちょっとだったんでねえの? ポニーテールできる長さ、残念だな」
はああ、と呆れたようなタスクのため息を聞いて私は益々悲しくなって俯いていた。
バーカ、バーカ、鈍感男のバーカ。
唇かんだら泣き出しそうになった時。
「でもいいんでね? 涼しそうだし。野々にはこっちの方が似合ってる……とオレは思うけど」
「え⁉」
私が落ち込んでいると思ったのか、短くなった髪の毛をワシャワシャと撫でてくれた。
優しい顔で、タスクの大きな手で。
嬉しくてニヤけてしまいそうなのに、ついつい 照れ隠しで揶揄ってしまう。
「あ、そっか、タスクはユカユカ好きだからショートカット好きだもんね」
「それだけじゃねえし」
首まで赤くなったタスクが私から目を反らして、一生懸命消しゴムをかけてるから。
私も何となく赤くなってまたイラストを描き出した。
それだけじゃないって、なに?
聞きたいけど、聞けなくて……。
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