29.愛しているといえるよ

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「申し訳ないです……。はあ、すぐ帰ると思っていたのに」  しかし、清子と晴紀の母子が顔を見合わせ微笑んでいる。 「いや、先生そっくりだよ。島に怖じ気づくようなやわな精神の医者じゃなくて、むしろ熱血してくれるってね」 「お父様を拝見して、なるほど、このようなお嬢様が女医さんが誕生した訳ねと、私も納得しましたよ」  いやー、父と似ているなんて思いたくなーい! 熱血てなによ、この前から熱血って! 美湖は顔を両手で覆う。  都会で澄ましてなにごともなくすりぬけてきた私はどこに行ってしまった? ほんとうに最近、そう思っている。 「晴紀君。これでいいかな」  父も着替えると張りきって出てきた。 「大丈夫ですよ。俺の服がぴったりでよかったです」  父のほうが年齢的に横幅があるが、背丈は晴紀とそう変わらない。晴紀の釣りレジャーの服を着込んだ父は靴も借りてすっかりでかける準備完了。 「お父さんも、このリールでやってみますか。シンプルなのもあります」 「いや、この電動リール使ってみたいと思っていたんだ」  では、行ってきます――と、晴紀は臆することなく堂々と父を連れてでかけてしまった。
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