劇薬博士の溺愛処方《本編》

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劇薬博士の溺愛処方《本編》

* 1 * 再会は金曜日の夜に 「貴女あたくしをバカにしているの? ゼリーといえば、アッチの、潤滑ゼリーの方よ!」 「も、申し訳ありませんお客様! ただいま持ってまいります!」  マダム然とした年配の女性に怒鳴られ、日下部三葉(くさかべみつば)は顔を真っ赤にして薬棚から商品を探し、先ほどまで手にしていた子供用投薬ゼリー『おくすりのめるね』をもとの場所へ戻すのだった……        * * *  自分では上手くやっていけたと思っていても、周囲の評価は異なっていたりする。  六年間の大学生活を終えて総合病院の調剤薬局で薬剤師として働き始めた三葉にとって、この決断は苦渋の選択だった。  けれど、自分がいることで人間関係が円滑にならないというのならば、自分が舞台から退場するしかないではないか。  いつまでも引きずっている方が後々まで影響を及ぼしてしまう。  それならば逃げることも正しいのだと、そう思って一年経たないうちに辞めた。  自分にとって馴染みのあった病院からも離れて、東京の叔父が昔から営んでいる街の薬局に転がり込んだ。
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