劇薬博士の溺愛処方《本編》

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 新宿広小路薬局(しんじゅくひろこうじやっきょく)。名前を聞いたときはもっと大きな薬局だと思ったのだが、実際のところはうなぎの寝床のように店の奥が細長い、古くてちいさな薬局だった。  JR線の新宿駅の西口改札を出て小滝橋通り沿いに少し歩き、青梅街道とぶつかりあう交差点を東口方面へ向かう新宿大ガードの手前のごみごみした金券屋や飲み屋街の細道に位置しているため、広小路でもなんでもないのだが、先代が名付けた頃はもっと土地が大きかったから広小路でも違和感がなかったのよと叔母は笑いながら説明してくれた。ギャンブルで大敗して泣く泣く土地を切り売りして辛うじて残ったのがこの薬局だということも今では笑い話らしい。 「三葉ちゃんも驚いたでしょ。こんな小さな薬屋さんで」  午前九時から午後九時まで。叔父夫婦が営むこの薬局は近所の都立病院の処方箋も受け付けており、昼間はいちばん奥の調剤室にパートのおばちゃん薬剤師が入っていることもある。三葉もはじめは調剤室担当のパートさんが旦那さんの転勤で辞めるというのでその代わりとして店に入ったのだ。
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