1・触れられなくても

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「あの子ね、部屋から出ないの」 「うん」 「もう、あの子の声ずっと聞いていない」 ハナは諦めたような表情だ。 「ハナ、大丈夫だよ」 「何が?」 「ハナがついているんだから、娘さんは大丈夫」 そんなゆうの言葉も、ハナの前では何の励ましにはならなかった。 「何?私ずっと心配してるよ?でもあの子は顔も見せないし」 ゆうにはハナ目が涙で滲んでいるように見えた。 「ドアの向こうにいるはずのあの子に話しかけて、あの子が部屋から出たら姿を見せないように息を殺して。生存確認っていうの?それが日課」
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