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「さあ姉様、こちらへ」
今や見目麗しい美青年に成長したアランは、輝かんばかりの笑顔で私に自分の隣を勧める。
王座についた自分の隣を、だ。
「い、いいえ。陛下……」
「姉様、アランと」
「……陛下」
「姉様」
「……アラン」
「はい、姉様」
にっこり、と満足気に笑うアランとは真逆に、この時点で私の心は折れかけていたけど、ここは踏ん張らなきゃ。
「その席は正妃が着く場所よ、アラン」
だから無ー理ー。と、告げてもアランの笑顔は曇らない。
「僕は正妃なんて持ちませんよ。子を産む相手なんて側妃で構いませんし」
私が構うわ!!
もう嫌だこいつ、と遠い目になる私を、アランの側近達が促して正妃用の椅子に座らせる。そんな私を眺め、アランは本当に嬉しそうに笑った。
「これで姉様は他国に嫁がなくて済む。ずっと一緒にいられますね、姉様」
……そう。この、血塗られた王位纂奪劇の発端は、こともあろうにこの私が原因なのだ。私に持ち上がった隣国との政治的な結婚話。
いわゆる政略結婚を、この弟は嫌がった。嫌がったあげく、兄弟や父を手にかけて一国を掌握したのだ。
……私の未来と共に。
「大好きですよ、姉様」
子供の頃と同じ笑顔を浮かべるアランに優しく微笑み返しながら、私は思った。
早いとこ、この国から脱出しよう、と――。
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