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佐倉と、ヨットハーバーで偶然出会ったのは先月のことだ。
同じ会社の、ひとつ下の後輩の佐倉ワタル。
顔面偏差値が高くて、仕事ができて、スーツが似合ってて、しかも会話が楽しくて、平々凡々でも言い過ぎ、サボりぐせがあって、成績も中の下くらいの俺に対しても「太田センパーイ」と、いつもキラキラ笑顔で話しかけてくれる。
そんな佐倉が俺のクーラーボックスの中身を見て、尊敬の眼差しになった。
「すごいっ……太田センパイって釣り名人なんですね!」
「え、いや、そんな。た、たまたまだよ。たまたま……てへへ」
「今度、一緒に行きませんか? ううん、是非、連れってってください」
「佐倉も、釣りするの?」
「はい。実は。でもセンスがないっていうか……釣果もパッとしないんです」
確かに、釣りをしてきたにしては佐倉は手ぶらだ。
俺の知り合いの船長さんは、釣れるポイントをとてもたくさん知ってる。だから、釣れただけ。でも、一緒に釣りに行けば、もっと仲良くなれるかもしれない。
これはチャンスだ。間違いなくチャンス。このチャンスを逃しちゃいけない。
「じゃあ、良ければ……今度一緒に行こう」
「ほんとですか!? 約束ですよ!」
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