終わりまで、あと5分

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終わりまで、あと5分

 「地球滅亡まで、あと5分ってなったら何する?」  そんな話題を振り出したのは、秋山だった。日も暮れかかった教室には秋山と俺ともう一人、天野の三人だけが合わせた二つの机を囲むように各々の椅子を持ち寄って座っていた。  「何、突然?」  俺は秋山の問いかけに答えず、問いで返す。  「あと5分か~。何しようかな?それって皆が知ってる前提?それとも、自分だけ?」  天野は俺を無視して、秋山の話題にのった。  「んー、どっちでもいいけど、皆が知ってる方で。あと5分を何も出来ずに終わるの可哀想だし。」  (話振っといて、どっちでもいいんかい。あと、その変な優しさ何?)  「マジか~。じゃあ、金借りまくるのは無理だな。ていうか、店もやってないのか。」  天野は難しい顔をして、一度黙り込む。俺と秋山は、次の天野の言葉を静かに待った。  「とにかく、旨いもん食いたいな、最後の晩餐に。でも、レストランも空いてないし、料理も出来ないから、、、カップ麺で。」  「ええ、最後の晩餐それでいいの?熱湯で作る即席麺でいいの?」  俺が真っ先に反応する。  「でも、冷凍食品は時間かかるし。カップ麺なら、3分で作って2分は食ってられるぜ?」  「お前の中にはカップ麺か冷凍食品しかないの!?最後の晩餐が究極の二択?」  「いや、熱湯を作るのに時間がかかるから、実質1分くらいだぞ。」  秋山が天野の考えに言及する。  「厳しっ!それくらい許してやれよ。湯くらい沸かしてやれよ。」  何故か俺は、さっきまで問い詰めてた天野の考えのフォローに回ってしまう。  「駄目だ。厳密にいかなきゃリアリティーがない。」  (どっちでもいい、とか言ってた奴がよくそのセリフ言えたな!)  「それと、皆が知ってる前提にしたけど、店とかは全部、通常営業ってことでいいぞ。」  (そこはいいんかい。)  「あいつら、店を営業することに命かけてるからな。死ぬ気で営業してるから。」  「いや、偏見がすごいな!」  ちなみに秋山は、代々、八百屋の家系の一人息子だ。その言葉はきっと、自営業への罵倒ではなく、親の背中を見て育った過去から来るものなのだろう。それにしては、空回ってるけど。
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