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「そっか、それなら話は別だな。高級レストランでフルコース食べてみてー。」
天野は俺がツッコむことに耳も貸さず、話を戻す。
「そんな時間あるわけないだろ。前菜で終わりだよ。前菜どころが、水を出された時にはもう5分経ってるわ。」
秋山のジャッジは厳しいままだ。
「じゃあ、ファミレス、、」
「同じだな。」
「ラーメン屋、、」
「変わらず。」
「んじゃあ、立ち食いそばでいいよ。」
天野はもう投げやりになっていた。
(・・だいぶ、ランク下がったな。)
そんなことを思ってはいたが、天野も俺も結論が出た、っといった感じで話を終えようとしていた。
ガタッ、ドン!
突然の大きな音に、その発生源を見つめる。秋山が立ち上がって両手を机につけていた。
「バカヤロー!そんなんでいいのか!?お前の『食』への思いはそんなもんだったのかよ!」
「急にどうした!?」
言われた天野より先に、俺が反応した。
「地球が滅亡するんだぞ!最後の晩餐がそんなもんでいいのか!?」
秋山は俺の言葉も気にせず、天野との距離を詰める。
「カップ麺を真っ先に選ぶような奴に、そんな崇高な考えはないと思うぞ。」
俺は秋山に聞こえるようにというよりか、独り言のようにボソッと呟いた。
「そうだった。最後の晩餐だもんな。・・でも、どうすれば。もう、俺に出来ることなんて。」
天野は秋山の思いに答える。
(なんだ、こいつら。)
「まだ、手はある。買ってくればいいんだ。それなら、時間もかからない。」
「でも、俺には料理をする腕も頭も、、」
下を向いてしまう天野に、秋山は二人の距離を一歩で詰めて、肩にポンッと手をやる。
「大丈夫。スーパーで出来合いのものを買ってくればいいんだ。」
ハッとした様子で天野は顔を上げる。
「そうか、、そうか!出来合いなら、時間をかけずに食べたいものが食べられる。」
「ああ、諦めなくていいんだ。」
(なんだか、しょぼい小芝居を見せられてるんだが。)
そんなことを思いながら、俺はふと浮かんだ疑問を投げた。
「何か盛り上がってるみたいだけど、それってカップ麺からほとんど進歩してなくないか?」
俺のその一言は、どうやら二人の癇に障ったらしい。二人して眉をハの字にして、俺のことを見てる。少々の無音の後、口を開いたのは秋山だった。
「じゃあ、もういいよ。タコパだ、タコパ。パーティーだったらいいだろう?楽しいだろ?」
それに次いで、天野も口調を変えて言う。
「やっと答えが出たと思ったのによ。分かった、タコパな。俺、タコ焼き器準備しといてやるから、材料は任せた。もう一度、集合な。」
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