1、ロクデナシ

1/4
前へ
/59ページ
次へ

1、ロクデナシ

「良い子でいなければならない」  わたしは、いつの頃からかそんなことを考えるようになった。  そもそも、『良い子』ってなんだろう。  他人に囲まれて、礼儀正しくて、いつも笑顔でいる人は、『良い子』なんだろうか。  もしそうなら、そんな人生さっさと終わりにしたい。  チラチラ他人の顔見ながら、へらへら生きていくって、凄く大変だし、窮屈だ。  だって、今のわたしがまさにそうなんだから。  わたし…鬼柳薫子は、いつも人に合わせて生きてきた。  小さい頃から、人が嫌がることはしなかったし、言わなかった。 「薫子ちゃんは良い子だね」…そう言われるのが嬉しかった。  だけど、そんなの結局は自分を良く見せたいだけだ。  心の中では、上手いこと言えないんじゃないかとか、嫌われたんじゃないかとか、常に葛藤していた。  その為に、見たくないTV番組観て、興味ない音楽聞いて、必死に周りと歩調を合わせてきた。  何時しかわたしは、『良い子』から『都合の良い子』になっていた。  耳触りの良いことしか言わない。  決して否定しない、意見もしない。  誰からも、都合よく扱われる便利な人…それが、18年の人生で得たわたしの評価だった。  本当は、今すぐやめたい。  空気なんて読みたくない。気なんて遣いたくない。  だけど、嫌われるのは怖い。  がんじがらめになりながら、わたしは毎日過ごしていた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加