重く閉ざされた扉

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 自分の中に黒くて重い扉があった。私はこれゆえに、打ち解けない子どもだった。  大人になって付き合っていた恋人にそれを話したら、「大丈夫?」と言われたので、それ以来ずっと誰にも話すことはなかった。  扉が開くことはないのだろうと思っていた。実際、開けてみたいとは思わなかった。いや、それよりももっと重大なことがあった。  ――開け方がわからない。  ある晩、夢を見た。  職場の人たちとホテルの会議室で待ち合わせをすることになっていた。会場に向かい、指定された部屋のドアを開けて中に入った。  すると、知らない人たちが将棋を指していた。向こうは私が入って来ても気づかないようだ。勝負に夢中になっている。  私は職場の人たちを待つことにした。  どのくらい時間が経ったかわからない。一向に職場の人たちは現れず、部屋にいる人たちは黙々と将棋を指している。  その時だった。  入り口のドアから、黒いドロドロした何かが扉を開けて入って来た。  ――え~、何これ!?  すると、将棋を指していた人たちの一人が声を発した。 「僕たちと逃げれば大丈夫だよ。ただ、あと5分だけ時間をちょうだい。もう少しで勝負がつくんだ」  そこで、夢から覚めた。    変な夢だった。顔を洗って着替え、PCの電源を入れた。  クソみたいな数のダイレクトメール。怪しいのもあるし……削除、削除、削除。――一通のメールで手が止まった。 「【5分だけ時間をください】あなたの人生に重く閉ざされた扉を開きます!〔会場:将棋会館となり〇〇ビル3階〕」
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