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串計4本、酒計3杯
「焼き鳥は豚だ、豚野郎がっ!」
「焼き鳥は鳥だ、鶏頭がっ!」
鳥頭と豚野郎。
鳥頭がトサカ頭で鳥っぽいためそういうあだ名で、豚野郎が大柄で笑うと「フガッ」というためそういうあだ名。
でも、私は頭が混乱してきている。
なぜなら、鳥頭は「焼き鳥は豚だろ」と言い、豚野郎が「何言ってんだ、焼き鳥は鳥だろ」と言っている。しかも、鳥頭は臆病で豚野郎は忘れっぽい。
互いに「この鳥頭がっ!」に対し「この豚野郎がっ!」なんて罵り合うのだからもうわけがわからない。
見た目と中身が逆故に、時々「なんで自分のことを卑下しているのだろう」と疑問に思ってしまうこともある。
わたしたち入れ替わってるぅ現象を自覚していない馬鹿どもなのか、と考えて、馬と鹿が現れて。終いにはお前は負け犬だ負け犬と言い出した豚野郎と、それはお前だろそんなの猿でもわかるぞと煽る鳥頭。ここは動物園かと錯覚し始めた。これ以上動物を出さないでくれ。
「てめぇの地元には鳥はいねぇのか?」
「てめぇ室蘭馬鹿にすんなよ。てぇめの地元こそ、豚はいねぇのか?」
「残念ながら日本の中心であるTOKYOにはいねぇな田舎者がっ!」
「お待たせしました。とり串です」
「ほら鳥の方が早い」
店員がテーブルに置いた皿を豚野郎が自分の元に引き寄せると、そのまま人差し指と親指でつまんで持ち上げる。そして顔を突き出し、見せびらかすように串の先端にある肉に歯を立て、そのまま横にスライド。コロンと口の中へ転がり入れて、もちゃもちゃ咀嚼している。
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