あとがきにかえて ― 旅路の果てに

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あとがきにかえて ― 旅路の果てに

 2014年、エジプトで新たな発見があり、第二中間期と呼ばれる戦乱の時代に未知の王朝があったことが確認された。「未知」とは、後世に作られた王朝の系譜では省かれていて知られていなかった、という意味だ。  見つかった王の名は、セネブカイ。遺骨に残る傷跡から、戦場に斃れたと考えられている。だから、少なくともキャラクターの一人については、その最期の様子を想像することは出来る…というわけだ。他の人々については、何の記録も残されていないけれど。  元々、この物語はずいぶん前に書いていたものだった。  第13王朝以降の「第二中間期」と呼ばれる時代は、「トリノ王名表」の残る王名ですら不確かで、遺物などから記録を追うこともままならず、実際に誰が王で、どの範囲を支配していたのかも良く分からない――そんな時代である。  書いた当時はあまり知識もなく、よく分からない時代だからというので色々逃げてしまったのだが、今回書き直しに当たって読み返してみて、「分らないなら空想で間を埋めてもいいじゃない」と吹っ切れた。何しろ、今後の発見で王朝の数ですら増えていくのだ。この先もきっと、歴史は描き換えられ続けていく。史実に正確に従おうとしても無理だろう。  ウアセトの王朝が分裂した王国の再統一を成し遂げるまでは、あと百年の戦乱の時代を駆け抜けなければならない。歴史書を開いても、出てくるのは最後の数人くらいだ。けれどその間の、ほぼ何も記録の残されていない人々にも、それぞれの物語があったはずなのだ。  …きっと。  今回の物語は、これでおしまいです。  最後までお付き合いいただきありがとうございました。  それでは皆さま、  またいつかの時代の、どこかの場所でお会いできることを願って。
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