48人が本棚に入れています
本棚に追加
王子様の朝
自由と平等、美しい言葉だ。だが一体それは世の中のどこに存在しているのだろう。
イクスクルーシブ(排他的)教育からインクルーシブ(包括的)教育の必要性、持続可能な社会への転換、学者の言っていることは立派だがそれこそ大国のリーダーに言い聞かせてやりたい。だいたい異なる者を排除していたのは大人たちだろう。格差や環境破壊を生んだのは先人だ。しかし…うちの会社のスローガンには使えるかもしれないな…
そんなことを考えながら碧は飲みかけのコーヒーを飲み干した。今日は応慶寺高等学校の入学式である。碧は新入生代表に選ばれていた。入学式での挨拶を頭の中で反芻していたのだ。
応慶寺高等学校は伝統ある私立の学校だ。生徒の多くが資産家の子息子女である。特に幼稚舎からそのまま上がる生徒は譜代と呼ばれ、名家の出が多い。中等部は1学年が4学級の小規模校であるが、高等部は普通課のクラスが1学年で8学級になり、芸術クラスが1学級の大規模校になる。
幼稚舎からの生徒は外部からの入学生徒とは一線を画していて排他的なコミュニティを形成している。因みに外部から高校に入学する生徒は外様と呼ばれていた。
朝食を終えて新聞を読んでいる碧に執事の長谷川が声をかけてきた。
「碧様、お時間です。お忘れ物はございませんか」
もうそんな時間か。碧は身支度を整えてエントランスに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!