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 エントランスには五条耀(ごじょうよう)が待っていた。ここは五条家の屋敷である。耀は現当主の長男だ。そして碧の従兄弟である。碧の姓は加藤。訳あって幼少から五条家に世話になっている。東京目黒にある五条家の屋敷は3棟からなり、耀は中央棟に碧は東棟に住んでいる。それぞれの棟には地下室があり、地下ではすべて繋がっている。  「おはようございます。行ってらっしゃいませ」  エントランスには耀の妹、香織が立っていた。兄を見送るためではなく碧を見送るためである。香織は碧を慕っている。憧れと恋心が混在した気持ちを碧に抱いていた。  碧は日本人離れした顔つきをしていた。小さい頃はフランス人とのハーフによく間違われた。顔が小さく手足が長い。スラリとしてはいるが身体はよく鍛えているため筋肉質ではある。碧は品格があり言動はスマートだ。中等部では王子(プリンス)と呼ばれていた。  耀は碧の従兄弟だけあって背格好は似ているが好戦的で、思ったことを口にする。思い立ったが吉日と後先考えずに行動する典型的王様タイプであった。出で立ちも如何にもやんちゃ坊主で一見どちらが当主の長男なのかわからない。 「行ってくるよ、香織ちゃん」碧は香織に声をかけて耀と一緒に車に乗り込んだ。
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