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花火開始は七時から。でも、先にゆっくり屋台をまわりたいねって早めに家を出た。
俺たちはこの日のために、一ヶ月前から有休の申請もしていた。
一ノ瀬さんはもう指折り数えてワクワクしちゃって、張り切って生成りに縞模様の甚平を買った。
俺は青色の細かい市松模様の柄の浴衣。
帯は紺色で、七宝柄っていう、コンパスで円をいっぱい重ねたような模様が入ってる。それに、ちょっと粋なお財布ポーチと、雪駄がセットになって一万二千円とお値打ち価格だ。
本当は一ノ瀬さんみたいに甚平の方が涼しそうだし、動きやすそうだからお揃いにしようかなって思ったんだけど、店員さんが来て「こちらどうですか? 似合いますよ~」なんてかなりグイグイ勧められたから浴衣にした。こんな時じゃないと着ない服だし。たまにはいいかな? なんて思って。
一ノ瀬さんがターキーレッグに被りつき、満面の笑みを向けてくる。
「じゃあさ、全部一個ずつで半分こすればいいね! そしたらいろんな種類食べれるもんね」
「うん! はい。じゃあ、交換。プリプリして、お醤油香ばしくて美味しいよ」
半分食べた、いか焼きをお皿ごと交換する。
ちょっと齧ってる見た目とかどうよって感じだけど、頭と胴体と足、それぞれ一ノ瀬さんも食べたいだろうし。相手は一ノ瀬さんだし。
串のみだとバランス的に危なっかしいけど、お皿つけてくれて助かったよ。
ターキーは見た目ごついけど、食べてみるとしっとりして燻製のいい香りがした。
一ノ瀬さんはそのあと早くも、甘いの食べたくなったーと言って、ドラゴンアイスの屋台へ並ぶ。真っ白のふわふわした見た目のかき氷。一ノ瀬さんは自分が食べたくて買ったはずなのに、スプーンですくうと最初のひとくちをこちらへ向けた。
「ほらー、シロちゃんあーんして」
「え、あ。あーん」
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