118人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
八月三日 花火大会の夜
「わぁ! 見てみてシロちゃん! 肉っ! でっかい肉あるよ! あ、でも最初はやっぱりいか焼きかなぁ!」
一ノ瀬さんが目をキラキラさせて屋台を指さす。すごくはしゃいでる。なんて、一ノ瀬さんを観察してる俺自身もお祭りは子供の時以来。賑やかな屋台のたれ看板がズラリと並びどこまでも続いてる光景は、一ノ瀬さんじゃなくてもワクワクしちゃう。
一ノ瀬さんはターキーレッグっていう大きな骨付き肉と、定番のいか焼きで悩んでいるらしい。いか焼き美味しいよね。まるまま一匹串に刺さってるやつ。
「ターキーレッグが大きいからお腹いっぱいになりそうかなぁ。屋台はいっぱいあるし色々食べたいよねー」
なるほど、それはちょっとわかる気がする。一ノ瀬さんに賛同した俺は一ノ瀬さんを見上げ一つ提案してみた。
「ターキーレッグ買う? 俺、いか焼き食べたいし半分ことかする?」
「ああ! シロちゃん天才! そうしよう!」
一ノ瀬さんがパァと笑顔になった。「うんうん」と頷きターキーレッグの列に並ぶ。
今日は花火大会に来ている。
大規模で有名なお祭りだから、屋台も人もすごくいっぱいだ。家族連れやカップルでごった返してる。もちろん友達同士で来てる人達もいるだろうけどね。あの辺とか。赤や黄色、薄紫と華やかな浴衣姿で並んで歩くうしろ姿へと目を向けた。
こういう風景の中にいるだけで、日常とかけ離れた特別な空間にいるような感じがして、気分が上がる。
最初のコメントを投稿しよう!