夏。住宅街。ツキちゃん。

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 まっすぐ進んで、それから右へ。左、真っ直ぐ、右、右、左。 「おい、そっちは神社しかないぞ」  お兄さんが後ろから声を掛けてくる。神社。そっか、神社かぁ。  ツキちゃんも不安そうにあたしの手を握る。お兄さんが怖いのか、あたしが黙ったままなのが怖いのか。  見上げるとずうっと遠くに階段が見えた。山に繋がっている階段。てっぺんに赤い鳥居が見えた。風にそよいでぱたぱた白い飾り紙が棚引く。丁度良い高さじゃないかな。 「ツキちゃん、神社行くよ」 「じん、じゃ」 「おういちびっ子。あそこは鳥居しかないぞ」  お兄さんの声を背中で受け止めてあの階段を目指す。真っ直ぐ、真っ直ぐ、真っ直ぐ。
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