高スペック男子 初めての嫉妬?

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高スペック男子 初めての嫉妬?

 里見さんとの食事から一週間、彼女からの連絡は一度も無い。  仕事中だと分かっていてもプライベートのスマホに手が伸びる。何の通知も示していない画面を見て今日何度目かの溜め息を吐いた。  やっぱり自分から送った方が良いのか?ーーと画面上で指を彷徨わせていた時だった。ポンと背後から肩を叩かれる。振り向くと、石井がニヤリといたずら顔をしている。 「神宮寺が仕事中にスマホ気にするなんて珍しいな~。はい、お疲れさんっ」 「石井……、ああ、お疲れ」  「これ奢りね」と言いながら俺がいつも飲んでいる缶コーヒーを差し出す。それに一言お礼を言い、「うん、まあね」と石井の言葉を濁した。 「お相手は、里見さん?」 「……うん。この前、食事に誘って行ったんだけど、それから一度も彼女から連絡が来なくて」  相談するつもりは無かったのに、誰かにこのもやもやとした感情を聞いて欲しくて、つい彼に話してしまった。 「じゃあ、お前からしてみれば良いんじゃないの?」 「そうなんだけと……、この前の食事は俺から誘ったから、そう何回も連絡するも迷惑かなって」 「いやいや、神宮寺からの誘いで嬉しがらない女の子はいないでしょ」  石井の適当な言葉に「買い被り過ぎ」と呆れたよう返す。 「里見さんは、あまりそういう感じの人じゃないんだと思う」 「そういうって? 軽い感じじゃないってこと?」  言葉にするのを失礼に感じ、あえて口に出さなかったワードを、石井は簡単に言う。 「まあ確かに、里見さんは堅そうだよなぁ~。というか、男慣れしてない感じするし、大人しそうな性格に見えたから、彼女から神宮寺にアクションを起こすような事はないんじゃないか?」  石井の言葉に「そうかな」と返す。確かに石井の言う通り里見さんは、決して明るくて元気な性格ではないのだろう。それでも、自分の好きな事に関しては、パッと表情を変えてキラキラとした目をして楽しそうに話をする彼女は、とても新鮮で可愛らしく見えた。   自分の好きな事を生き甲斐のように好きだと言う彼女を俺は羨ましく思ったのかもしれない。  大人になると、仕事の忙しさが勝ち、趣味を堪能する心さえも疲れてしまう事だってあるだろうに、彼女は自分の趣味を糧に生きている感じがとても眩しかった。 「里見さんか……。神宮寺にしては、珍しいタイプに走ったな」 「珍しいって?」 「いや~、いつも華やかな綺麗な感じの子と付き合う事の方が多くなかった?」 「ああ……、別にそういう子がタイプってわけじゃないからね。今までの子は、割合と告白される事の方が多かったし、断る理由が無ければ付き合って、それから好きになっていこうと思ってたから。でも、それがいけなかったのかもな。結局、殆ど振られちゃってたし」 「そうだったな」  石井は気まずそうに視線を逸らした後、「まあ、頑張れよ」と肩を軽く叩いた。
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