高スペック男子 初めての嫉妬?

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「話変わるけど、お前そんなストラップ付けてたっけ?」  石井はそう言って、俺のスマホを指差して物珍しげに聞いてきた。 「ああ、この前買って、付けてみたんだ。俺には似合わないかな?」 「いや、似合うかどうかはいまいち分からないけど、そういう類いのものを一切付けてるところを見たことが無いから少し驚いて……。もしかして、里見さんと出掛けた時にでもお揃いで買っちゃったとか?」 「まあ、そんなところ」 「まじかっ……」  石井的には冗談で言ったつもりだったのだろう。俺の返答に、今日一番の驚いた表情を見せた。 「結構、本気で好きってこと?」 「好き……か、どうかはまだ分からないよ。二回しか会ってないし。でも、一緒にいて安心するっていうのかな? 彼女と話していると楽しいし、妙に落ち着くんだ。だから、また顔が見たい、会いたいって気持ちになる」 「なるほどなぁ~。まあでも、俺等くらいの年齢だと、好きって感情自体があやふやで、十代の時に感じたドキドキ感も薄っぺらくなるよな。ましてや結婚を視野に入れた付き合いってなると、相手の事を想う気持ちの他に、自分自身がその人と一生一緒にいる覚悟と自信の方が大事だし。その場のノリだけで付き合うっていうのはもう卒業する歳まで来てるんだよな……」  石井にしては珍しく真面目な顔で、俺と似たような考えを言い、思わず「そうだな」と深く同意をしてしまった。 「とりあえず、何回か会ってみない分には次には進めないし、今は里見さん以外の女性の事は考えてないから、焦らず慎重に行ってみるよ」 「そうだな。まあ、また何かあったら相談に乗るから。合コンだってセッティングするし」 「いや、合コンは良いかな」  石井と話したお陰で、先程までのもやもやとした感情がだいぶ落ち着いた。  とりあえず、仕事に集中だ。そうやる気を出し、石井から貰った缶コーヒーを一口飲み、午後から商談する取引先への見積りに目を通した。
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