高スペック男子 初めての嫉妬?

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 暫くして濃厚なチーズの香りと共に、注文していた料理が届く。釜戸で焼いているからか時間は少し掛かったみたいだが、里見さんと一緒にいると時間の感覚が早く感じるようで、待たされたようには感じなかった。  一口、ピザを頬張る。里見さんの言った通り味は中々のものだ。チーズのボリュームもちょうど良く、外側の生地がサクッとしてる割に中はふんわりと軽く食べやすい。  ふと前を向くと、里見さんがじいっと俺の方を見ていた。 「ん? どうしたんです?」 「あ、いえ……っ、すみません、つい口に合うのかどうか心配で見詰めてしまいました」 「美味しいです。通いたくなるくらい。今日ここに連れてきてくれてありがとうございます」 「あ、いえ。美味しいなら、私はそれで満足ですので」  照れ臭そうに笑った後、漸く里見さんもピザを口に運んだ。  彼女と一緒にいると、時折、沈黙が流れたりする割に嫌な空気にはならないのが不思議だ。話を振ってつまらないと感じさせないように気を遣ったのは最初だけで、今は、肩の荷が下りたような気楽さでいた。それは決して、里見さんの事を軽視しているわけではなく、ただなんとなく、彼女だったら、こんな俺でも構わないのではという安心感から来るものだった。  ちらりと里見さんを見ると、彼女は美味しそうにピザを頬張っていた。前回よりも緊張していない様子が見て分かる。それだけで、彼女と俺との距離が縮まったような気がして少しばかり胸が弾んだ。 「ーーあ、神宮寺さんじゃないっすか」  突然、どこかで聞いたことのある声が耳に届く。声のした方を振り向くと「ほら、やっぱり神宮寺さんだ」と爽やかなスマイルを見せた栗林がいた。そして、その隣には高橋もいた。栗林は仕事の時と変わりない見た目だが、高橋の方は、普段下ろしている前髪を緩くオールバックにして、整端な顔付きを露にしていた。  この二人、相変わらず仲が良いな。 「こんな場所で合うなんて偶然っすね! 神宮寺さんもピザ食べに来たんすか?」 「ああ、うん。二人も休日にまで会ってるなんて、本当仲が良いな」 「いや~、俺は家で寝てたかったんですけど~、高橋さんが誘ってきたんです。先輩の誘い、断れないんで」 「そういえば、二人とも社宅一緒だもんな」 「そうなんすよ~、しかも隣同士なんすよ~」  栗林は困ったように笑った。高橋はいつもと変わらず顔にあまり感情を出さず、ぺこりと頭を下げた。おそらく、俺の目の前にいる里見さんにだろう。 「食事中に邪魔したようですみません」 「あ、いえ、私は別に……」  高橋の言葉に、慌てた様子で里見さんは手を胸の前で振った。 「あーっ、誰かと思ったらこの前の合コンにいた方ですよね? 俺、高橋です! 覚えてますか?」 「え? はい、勿論ですけど」 「今日は神宮寺さんと二人で食事なんですか? 二人とも、合コンの時、沢山お喋りしてましたし、良く会うんですか?」 「えっと……」 「こら、高橋。里見さん困ってるだろ。栗林、悪いが、コイツをどこかに連れてってくれ。食事の邪魔になる」 「そうみたいだな」 「うわ、ひどいっすよ! なんすかそれ!」  騒がしく里見さんに詰め寄る栗林を制し、高橋に任せる。  相変わらず、人との距離感が近すぎる後輩は、里見さんにとっては些か面倒なタイプに違いない。心配になり、彼女の顔を見ると、彼女は固まったままじいっと高橋を見詰めていた。  んん?  
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