佐藤くん

薄い青の封筒

中学校の卒業式に手紙をもらった。

「中村　楓　様」
と15歳にしては綺麗な字だった。

彼とは幼稚園が一緒だったので知っていた。
特別仲が良かった訳でもなければ、悪かった訳でもなかったと思う。

彼は生徒会長をしていて野球部でみんなから慕われている優しそうで温厚そうな男の子だった。

彼とは中学校3年間同じクラスになってもいなければまともに会話もしていない。

思い出も、ない。

ただ、彼は全生徒の前でステージ上で話をしていて、私には死んでも出来ないなと思ったことがある。

単純に純粋にすごいと思った。

手紙に並んだ文字を見て男の子だなと思った。

私のことが好きだと書いてあった。

手紙を机にしまってもうどれくらい経つだろう。

彼に私はどう映っていたんだろう。

たまにふと思い出す。