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ならば、ぼくが会ったお姉さんは何だったのだろうか。普通に考えれば幽霊か何かの類だろう。しかし、芳しい女の子の香りや、握った手の温かさや、か細い心臓の鼓動は確かにぼくが感じたものだ。幽霊なんかじゃない。
あの帰り際に好きと言えていたら、その次の日に雨が降らずにあのまま会いに行けていたら、なにかが変わっていただろうか? ぼくはif(もしも)を頭にこびりつかせながら田舎を後にするのであった。
あれから幾星霜が過ぎたが、あのひと夏の思い出、空蝉のようなお姉さんのことは忘れない。
おわり
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