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やんわりとした口調だが頑として譲らない瑞希に、風間は苦笑した。
「わかりました。……残念だな。もっと瑞希さんと、話してみたかったのに」
名残惜しそうに見つめて、さらっと下の名前で呼ばれる。
―――この男、できる。
不意打ちかつ絶妙なタイミングに、瑞希は胸の高鳴りと戦慄を同時に覚えた。
「またぜひ、来てくださいね」
「うーん……昨日の失態があるから、行きづらいな……」
言い訳めいたことを呟くと、彼は首を傾げた。
「失態?」
「ほら、私ったら大声で……」
声を抑えるよう忠告されたにも関わらず、大声でよがってしまったことを仄めかすと、風間は事も無げに告げた。
「ああ、あれは演出ですから気にしないでください」
「演出!?」
「はい。こういう種明かしは、普通しないのですが……」
怪訝な顔をする瑞希に、彼はそう前置きしてから話し始めた。
「普通のマッサージでは、体のツボを押したでしょう? あれと同じで、性感では瑞希さんの心のツボを押したんですよ」
「心のツボ?」
「いわゆる『性癖』と呼ばれるものです。瑞希さんは羞恥心で興奮するタイプです」
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