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いくな。
夏の風物詩と言えば、やはり花火をおいて他ないだろう。
A山公園の花火大会は有名だ。八月の頭、毎年何万人もの人が訪れてごった返すことになる。美しい花火を見ながら、お祭りの屋台で買った焼きそばや綿菓子を堪能する。これほどの贅沢はないだろうと私は思う。
「ゆえに、彼氏と一緒に浴衣着て来れたらもっと最高なんだがねえ~」
「言うな友よ、何も言うな……!」
「今年も男っ気ないよね私達。うん、しょうがない!」
中学からの親友である私――明日花と奈留美、真礼の三人。別名彼氏欲しいぞ同盟のトリオは、今年も寂しく女三人だけでお祭りと花火大会を満喫している。三人の友情が続いているのは良いことであるし、女同士だけで遊び回るのも自由でいいと言えばいいのだが。こういったスポットに来るたび、浴衣姿でイチャつくカップルを見てしまうと、そりゃあもう嫉妬の炎がメラメラと燃え上がるものなのだ。
屋台の傍で、並んで金魚すくいをしているカップル。通り過ぎざま、見えないようにあっかんべーをする奈留美はなかなか大人気ない。気持ちは素晴らしくよくわかるけれども。
「奈留美奈留美、あんまり露骨にやるとどんどん嫌な人になるよ、ブスに磨きかかってもいいの?」
「いくない!しかし嫉妬は抑えきれん、今の男結構イケメンだったのに女ブスだった!何故あんな女がいいのじゃ!!私だってなあ!」
「そうやって、ガニ股で地団駄踏むところがあかんと思いますわ……」
私達三人の実質リーダー役である奈留美は、美人ではあるのだがいろんな意味で残念な人である。女らしさ、というのは今のご時世どこまで要求されるのかわからないが。とにかく思ったことを、すぐ口にしてしまうのが一つ問題である。下手に取り繕ったり嘘を言わない分私は非常に付き合いやすい人物だが、ずけずけずんずんとツッコんでくる女性はとっつきにくいと感じる男も少なくないのだろう。
女子高校生なのにこっそり年齢誤魔化して婚活やら合コンやらに参加しているらしいが、毎回成果が上がらずに帰ってきては、私の家に突撃してきてしょんぼりするまでがお約束である。とりあえず、まだ未成年なんだからお酒は飲むなよと言いたい。確かに彼女は一見すると高校生には見えないくらい大人びてはいるけれど。
それから、本気で誰かと付き合うなら、自宅の汚部屋はなんとかするべきではなかろうか。脱ぎ散らかしたジーパンやらスカートやら下着やらがベッドの上にまで散乱しているのは、同性の友人から見てもドン引きなのである。
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