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以下の文章は、当時の日本の新聞に掲載されたフィクション禁止法案の解説記事だ。
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>昨今の著しい情報環境の変化にともない、情報の誤認を利用した詐欺行為や、極端に偏った情報をもとにする危険思想の増加などが懸念されている。
>各国の専門機関はこの原因をフィクション(虚構・空想)と事実の区別が曖昧になったことにあるとし、これまで容認されてきた「事実でないことを事実らしく記述・表現する行為」を全面的に禁止する法律が制定され始めている。
>我が国の国会でも「虚構および空想表現物の規制法案」が審議中で、可決されれば来年末頃から施行される見通しとなっている。
>しかし憲法の「表現の自由」の侵害に当たるのではないかと反対する動きもあり、国会審議は難航している。
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その後の細かい政治的な抗争については知らないが、
約20年後に僕が産まれたとき、すでにこの世の中からフィクションは一掃されていた。
僕は”小説”なんてものを読んだことがないし”アニメ”や”漫画”も観たことがない。
「事実じゃないこと」や「実在しないもの」を書いた作品はすべて規制され、本には歴史や自伝など実際に起きた出来事しか書いてはいけない。
インターネット上でも同じだ。事実じゃない文章を書けば逮捕されるし、写真をきらびやかに加工するのも法律違反だ。
「虚構および空想表現物の規制法」はそんな風にあらゆるフィクションを空想表現として取り締まり、僕が生まれる頃には、世の中には事実しか残されていなかった。
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